“山形映画人”大活躍する 〜「観光大使」やメガホン〜
田中邦衛さんというと、50歳以上の映画ファンには『若大将』シリーズ(1961〜71年東宝)の青大将、『若者たち』シリーズ(1966年フジテレビ、1967〜70年映画)の長男・佐藤太郎のイメージが強いが、若者にも大人気の俳優さんである。
俳優座養成所時代に今井監督の『純愛物語』(1957年東映)で映画デビューしており、黒澤明監督『どですかでん』(1970年)、深作欣二監督『仁義なき戦い』シリーズ(1973〜74年東映)、高倉健さんとの『網走番外地』シリーズ(1965〜72年東映)や『居酒屋兆治』(東宝1983年)、山田洋次監督『学校』(1993年松竹)等々、役の大小にかかわらず、独立プロ作品も含め200本以上の作品に出演。
その間も、俳優座や安部公房スタジオの舞台も踏み続けていたが、戦後を代表する映画俳優であることに間違いはない。主役の若大将(加山雄三)を喰(く)ってしまう青大将のように、どちらかといえば脇役として異彩を放つ俳優さんだったが、フジテレビ『北の国から』(1981〜2002年)で主人公の黒坂五郎を演じ続けることによって、今や、幼子からお年寄りまで幅広く慕われる稀有(けう)な存在となっている。
その田中邦衛さんが、先日、東根市民立大学“タントまなべ学園”に講師として招かれ、またまた山形を満喫していった。“またまた”というのは、1998年11月に天童市成生地区のお父さん方の熱烈な呼びかけに応じて初来形以来、人の素朴な温かさ、米・山菜・果物など食べ物の美味(おい)しさ、温泉などに魅せられ、毎年のようにご夫婦で来形し、今回が5度目となるからである。
このたびも、東根の方々が振る舞う美味しい漬物に舌鼓を打ち、懐かしい成生では、成生小四年生の児童のとんと昔話に聞き入り、元気な合唱に感激の涙を流すなどいずれも温かいもてなしに、ますます山形と山形人を好きになって、現在撮影中の映画『精霊流し』のロケ地長崎県へ向かい、山形をあとにした。
俳優仲間からも尊敬を集める邦衛さんが山形を大好きでいてくれることが何よりも嬉(うれ)しい。最強の山形観光大使(自主的)である。
その山形が、ここ数年、映画のロケ地として活気づいていることは、これまでも何度か触れてきたが、山形出身の映画監督たちも負けじと活躍し始めているのである。
藤島町出身の冨樫森監督の長編2作目の『ごめん』(山形フォーラムで4月4日〜11日上映)は、大阪の小学6年生の男の子が、射精を体験することによる性へのほのかな目覚め、年上の女性への初恋、そのひたむきな想(おも)いを瑞々(みずみず)しく、時にユーモラスに描く。当時の自分と重ね合わせ、顔が熱くなったり、ほほ笑んでしまう快作。キネマ旬報日本映画部門で7位にランクインするだけでなく、文化庁の優秀映画賞も受賞。この後も竹内結子主演『星に願いを。』も公開待機中。
同じ藤島町出身では、石川浩之監督の初共同監督作『(ONTHABOAT)』(山形フォーラムで4月12日〜18日上映)も控えている。上山市出身の山川元監督は、役所広司主演の『東京原発』、そして村山市出身のベテラン村川透監督は、20年ぶりに復活の石原プロTVドラマ『西部警察スペシャル(仮題)』のメガホンを取る。
『たそがれ清兵衛』は映画賞を総ナメで、ロングヒット。『蕨野行』県内上映は大ヒット。『アルカディア』撮影再開。『日を愛(かな)しむ』も5月に撮影開始予定。
山形県内および山形人の活況には心がウキウキと躍ってくる…春です。
2003年3月28日 (敬称略)